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タイトル :音楽ホール・芸術・地域の動態創造に関する研究 ―佐敷町・シュガーホールを題材として―
別言語のタイトル :Research on generation of dynamics among concert halls, performing arts and regional communities : with special reference to the Sugar Hall in Okinawa
著者 :中村, 透
別言語の著者 :Nakamura, Toru
発行日 :2008-2-18
要約(Abstract) :学位の種類(博士(芸術文化学)),学位授与機関(大阪芸術大学),授与年月日(2008年2月18日),学位記番号(乙文博21号),報告番号(乙第21号)
本論文は、沖縄県島尻郡佐敷町(現南城市)の佐敷町文化センター・シュガーホールでの実践を題材にして、地方における音楽ホールと芸術、さらには地域の人々の音楽活動との関係を分析することにより、今後のホールとコミュニティーのあり方への一指針を示そうとするものである。1970年代から公共文化施設建設が地方に急増し、1980年代には、その延長上に「音楽ホール」という目的型の文化施設が出現した。そこには住民からの草の根的な文化施設の設置要求というよりも、行政主導型のハード建設が先行し、その後を追うように、文化政策や文化事業のあり方が論じられるという情勢があった。1994年6月に開設されたシュガーホールもまたその例外ではない。筆者は開館以来13年間、1996年からは同ホールの芸術監督として、各種事業の企画立案とその実行に直接従事してきた。佐敷町の決して豊かとは言えない音楽文化状況とハード先行ソフト後続といった条件のもと、地域の人々、芸術家、ホール・スタッフとともに、音楽ホールが地域の音楽文化に貢献するための方策を実践をとおして探ってきた。本研究は、わが国の地方音楽ホールにおける一つのモデル・ケースとして、ホールと地域の人々との関係で生起した事例を公開することで、外部価値を得ようとするものでもある。論文は、序論、本文4章と結論、および参考・引用文献、あとがき、付録資料からなる。序論では、本研究の目的と、研究に至った問題の所在を明らかにしたのち、その方法論を述べる主な方法は、佐敷町の史料やホールの内部資料・インタビュー等に基づく歴史的記述(第1章)公演記録・関係者の証言、実践現場での体験等に基づく事業実態の分析(第2章)、芸術学・文化行政学などの先行研究を参考とした分析と論の 構築(第3,4章)である。第1章「佐敷町とシュガーホール」では、佐敷町の歴史・文化の概観(1.1)、佐敷町におけるコミュニティーの成立条件(1.2)、コミュニティーの音楽文化環境(1.3)、文化センター・シュガーホールの設置と経過(1.4)について論じる。その結果、紆余曲折を経ながらも設置に至った音楽ホールが、開館直後の音楽事業面で直面した問題が指摘される。それは、佐敷町民の施設への期待が、伝統的な”ムラヤー(村屋)”にイメージ化されるコミュニティー・センターであったこと、しかし、建設されたホールはクラシック音楽を前提とした目的限定型の施設となった矛盾である。第2章「シュガーホールと音楽事業」では、ホールに生じた問題を、再構築した音楽事業の理念による実践をとおして解決しようとした経過を詳述し(2.1)、その実践が町民と地域の音楽文化に与えた影響を考察する(2.2)。結果的にホールは、音楽芸術を媒介とするコミュニティー・センター機能の拡大化がはかられたのであった。
本論文の中核をなす第3章「地域の動態創造にはたす音楽ホールの役割」では、まず日本の地方ホールにおける一般的な問題として、演奏家と聴衆の音楽文化コードが必ずしも同定していないという問題意識に立ち、音楽家と聴衆とが双方向の関係で音楽を受容する方法とその意味について論及する。また、ホールでの音楽家と市民との関係をより一般的な角度から考察し、「地域における音楽文化の動態創造」こそが重要だとする考え方を提起する(3.2)。具体的には、音楽家と市民とが音楽創造を協働する方法とその意味をシュガーホールの実践を解析しながら提示し、その実践過程に生じる文化触変が地域の文化変容を引き起こす可能性を示唆する(3.3)。第4章「音楽ホールがはたす芸術概念の拡大」では、ここまでの論述を補足しながら、日本における音楽ホール設置の歴史と、地方の音楽ホールの課題をあらためて省察する。そして、今後の地方の音楽ホールおける音楽家の役割、市民の音楽芸術への参加の意味を「市民社会における芸術概念の拡大」を鍵概念として提起する。すなわち、音楽家と市民とが、身体が直接に仲立ちする第1次口頭性によって音楽芸術を伝えあうことや、間テクスト性を媒介にすることで、多様な回路での芸術参加が可能となり、地域の人々やコミュニティーを豊かなものにしてゆくと主張する。最後に、本研究をとおして明らかになった「今後の地方の音楽ホールがもつべき展望」として、以下の5点を提示する。1)地球上の多様な音楽芸術を受け入れ、芸術家と観客・聴衆とが双方向型で交信できる音楽文化施設としてあること、2)地域の市民と市民、あるいは市民と音楽家の協働による音楽芸術の動態創造を促進する機能をもつこと、3)地域の伝統芸能・音楽を発展的に継承させる機能をもつこと、4)異文化接触による文化触変を通して地域の文化変容に寄与し、多元文化のセンター的機能をはたすこと、5)地域社会に音楽芸術のための学習機能を開発すること。そしてこれらを実現するために、今後地方の音楽ホールは、市民と地域の音楽家、 外部から招き入れた芸術家との音楽創造を多様に組織し、地域社会に音楽芸術を価値づけてゆく工房としての機能を構築してゆくことであり、それを実現できる条件は、地域の公共ホールにしかないという結論で締めくくる。
This study examines the perspectives on local concert halls and their regional communities. It analyzes how the artists and people in the local community are involved in the management and projects of the Sugar Hall founded in 1994 at Sashiki town, Okinawa prefecture, Japan. The following outlines the features of local concert halls for the future: (1) As a cultural facility specializing in music, local concert halls should accept the diversity associated with musical art from around the world so as to generate interactive communication between artists and the audience; (2) A reciprocal relationship between people and artists will facilitate the generation of the dynamics of musical art at local concert halls; (3) Local concert halls should constructively inherit their traditional regional performances and musical art from the local community; (4) As centers of diverse cultural and artistic activities, local concert halls should contribute to the cultural transformation of the region by assimilating with other cultures; (5) The role of local concert halls in music is of educational purpose. In order to realize these findings, local concert halls are required to encourage people and local as well as foreign artists to create diverse musical art. It will make their communities acknowledge the value of musical art.
収録種別 :学位論文
公開者・出版者 :中村透
URI :http://hdl.handle.net/20.500.12000/5387
出現コレクション:博士論文(教育)

登録ファイル

ファイル 記述 サイズフォーマット
Nakamura_2008-1.pdf目次・凡例229KbAdobe PDF見る/開く
Nakamura_2008-2.pdf序論534KbAdobe PDF見る/開く
Nakamura_2008-3.pdf第1章2773KbAdobe PDF見る/開く
Nakamura_2008-4.pdf第2章3327KbAdobe PDF見る/開く
Nakamura_2008-5.pdf第3章6605KbAdobe PDF見る/開く
Nakamura_2008-6.pdf第4章738KbAdobe PDF見る/開く
Nakamura_2008-7.pdf結論193KbAdobe PDF見る/開く
Nakamura_2008-8.pdf参考・引用文献348KbAdobe PDF見る/開く
Nakamura_2008-9.pdfあとがき100KbAdobe PDF見る/開く
Nakamura_2008-10.pdf付録1946KbAdobe PDF見る/開く
Nakamura_2008-11.pdf論文要旨134KbAdobe PDF見る/開く